2015年にE3で「ファイナルファンタジー7」がリメイクされる発表を見た時、とても嬉しかった。「FF7」の発売当時は、父親がプレイしているのを横で見ていたのだが、かなり長い冒険だった事は覚えている。チョコボを捕まえたり育てたり、ゴールドソーサーで遊びまくったり、隠し召喚獣や武器を探したりと楽しいことがいっぱいのゲームだ。
複雑で深いストーリーも現在まで続く人気の理由になっており、本編を補完する派生作品の数はファイナルファンタジーシリーズの中で断トツだ。キャラクターの人気もすさまじく、主人公であるクラウドはスマブラに出るほどの知名度と人気があり、海外のファンがリメイクの発表で狂気乱舞する気持ちもわかる。
ただ「FF7」は非常にボリュームが大きく、リメイクがとても難しいだろうというのは、プレイしたことがある人なら推測できる。ワールドマップがある、パーティメンバーが9人、ミニゲームが多いうえにどれもかなり作りこまれている、チョコボ育てなど、リメイクの障害となりそうな要素を挙げだすとキリがない程で、本当にできるのか?という疑問を抱かざるを得なかった。できるとしても、あらゆる要素を減らすことになるだろう。
しかし『FF7R』は複数作に分けて発売されることになった。これにより、大きなボリュームの原作を余すことなくリメイクすることが出来そうだ。
今回発売された『FF7R』は分作の一作目で、原作の「ミッドガル脱出」までを描く作品となっている。ミッドガル脱出というのは、原作の最序盤にあたり、大体5時間~10時間ほどで通過することになるイベントだ。これをAAAクラスのクオリティで一本のゲームにするなんてこと本当に可能なのだろうか?
結果的には、私が『FF7R』をクリアするのにかかった時間は「40時間」ということで、RPGらしくかなり長い時間楽しめた。アクションを取り入れた戦闘は面白いし、グラフィックは非常に美しく、キャラクターも魅力的。最大の欠点は続きが遊べるまで、とても長い期間待たなければいけないことだろうか。
妥協のないリメイク
本作のゲーム進行はチャプターごとにストーリーを進めていく形式になっており、そのチャプターで行ける範囲にしか移動することはできず、ゲーマーが嫌いがちな一本道のゲームになっている。とはいえ寄り道要素が全くないわけではなく、そのチャプター内にストーリー進行に関係のないクエストが複数発生し、それらを解決することで様々なイベントが見れたり、新たな武器が手に入ったりするので完全な一本道というわけではないし、少なくとも私がプレイしている間「一本道で退屈だ」という感覚は無かった。
重要なのはクラウドの女装ではない
特に中盤の繁華街のような街である「ウォール・マーケット」での探索やクエストは非常に楽しかった。まず街自体の作りこみが非常に細かい。そこまで大きな街ではないが、夜の街特有の怪しさやワクワク感が充満しており、裏路地に入ると怪しい男たちが危険なビジネスの話をしている。そんな街でクラウド、ティファ、エアリスは街の権力者に近づくために、ドレスで着飾ることになる。これが有名な「クラウド女装イベント」だが、本作で重要なのはクラウドの女装ではない。いやクラウドも十分にかわいいのだが、エアリスとティファがドレスアップした姿が、少なくとも私が見てきたゲーム内の女性の中では最も可愛いと断言できるほどの美しさなのだ。
このゲームの女性キャラの可愛さは異常で、真面目にゲームの評価点として挙げても問題ない出来栄えになっている。ティファとエアリスの二人は本当に画面に出ている時間ずっと可愛く、彼女たちと共にフィールドを駆け回れるだけでこのゲームが存在する価値がある。さらに前述したドレスアップイベントでは、クラウド、ティファ、エアリスそれぞれに3種類の服が用意されており選択肢や行動次第でその週で見ることが出来る服装が変わるのだが、着飾った彼女たちは本当に感動的なほど可愛かった。私はティファの和装風の衣装を見ることが出来たのだが、あまりに突然その服装をしたティファが登場するので非常に驚くと共に、そのあまりの可愛さに完全に彼女のとりこになった。彼女が出ているのならば、絶対に続編もプレイしなければならないと真剣に思った。
教わってもいないダンスを華麗に踊りまくる
その他、ミニゲームも数多く存在しており、街のジムでのスクワットや懸垂、クラウドが教わってもいないダンスを華麗に踊りまくる音ゲーや、ダーツ、バイクなど、原作同様数多くのミニゲームが存在している。スクワットや音ゲーなどは本当にただのミニゲームで大して面白いものではないが、世界観の演出や街の雰囲気づくりに貢献している。バイクゲームは、スピード感や敵を倒した時の爽快感があり、そこまで奥深いものではないもののミニゲームとしては十分すぎる出来になっている。
ミッドガルの美しい街並みもこのゲームの素晴らしいポイントで、もともとミッドガルは独特で魅力的な世界観を持っていたが、現世代機で開発されることにより1997年にデザイナーが本来表現したかったものが表現されている気がする。特にエアリスと共に歩くことになる教会からスラム街までの道のりでは、廃墟となりガレキが積もる複雑な街並みが、空を覆うプレートの隙間からこぼれる太陽光によって照らされており、どこか懐かしい気分になるような穏やかで美しい風景が堪能できる。
シームレスに音楽が切り替わる
冒険を彩る音楽にはインタラクティブミュージックが取り入れられており、フィールドを移動している時の音楽が、戦闘に入るとシームレスに戦闘向けにアレンジした曲に変化する。シームレスに音楽が切り替わることによって、ゲームの流れを止めない効果などがあるのかもしれないが、単純に一つの曲に対して複数のバージョンが用意されていることが嬉しいポイントで、ファイナルファンタジーらしく良曲が多いのに加え、戦闘バージョンまで用意されているので数多くの音楽が楽しめる。
音と言えば、本作では音が発生した場所から聞こえる、というシステムが非常に細かく作られており、ケアルで仲間を回復した時でも仲間がいる位置から回復のSEが聞こえる。スタッフインタビューによると、すべてのキャラクターにこのシステムが適用されているらしい。かなり苦労したようだが、実際プレイしてみるとこのシステムが有効に作用していて、非常に自然にいろんな場所から音が聞こえてくる感覚が得られた。私はテレビのスピーカーからの音でプレイしていたが、それでも十分に機能していて驚いた。
原作にあったミニゲームやイベントなどを正しく進化させ、キャラクターや街はさらに魅力的に描かれており、音楽に関しても新たなことにチャレンジしているなど、「FF7」という伝説のゲームを妥協することなくリメイクしようとしている。
戦闘が本作で最も面白いポイント
本作の戦闘はアクションとATBを融合させたもので、現代のゲーマーにとってはすんなりと受け入れられるものになっており、1997年当時すでに大人だったゲーマーにとっては少々忙しい操作を要求されることになるかもしれない。この戦闘が本作で最も面白いポイントで、ケレン味のあるアクションはカッコいいうえに、敵の弱点や行動のスキを狙う戦略性もあって非常に楽しい。
バーストを考慮した戦略
通常攻撃で与えられるダメージが低い代わりに各種アビリティを使うためのATBゲージを溜めることができ、ゲージを溜めてから放つアビリティや魔法のダメージが大きくなっているため、通常攻撃でいかに効率よくATBゲージを稼ぐかがポイントになってくる。アビリティを使う際は、時間が超スローになるのでゆっくりコマンドを選ぶことができ、仲間の状況、敵の位置や弱点を考慮してアビリティを選択できる。
敵を攻撃し続けると体力とは別に「バーストゲージ」が溜まっていき、最大まで溜めると「バースト」状態になる。この状態の敵は行動停止するうえに、通常時よりも大きなダメージを与えることが出来る。それぞれの敵に設定されている条件を満たすと「ヒート」という状態になり、バーストゲージが溜めやすくなるので、相手の動きをよく見て攻撃することで、適当に攻撃するよりも圧倒的に短い時間で敵を撃破することが出来るのがとても気持ちいい。
アクションゲームとして優れている
本作のプレイアブルキャラクターは4人だが、一人一人濃く作られていて、それを象徴するのが、武器アビリティと固有アビリティだ。武器アビリティは特定の武器を装備している時に使用できるATBゲージを消費する強力な攻撃で、シンプルにダメージを与えるというだけではなく、それぞれのアビリティには有効に使用できるタイミングがある。敵がバーストした時に大きなダメージを与えやすいものや、バーストゲージが溜まりやすいもの、敵の攻撃を受け止めカウンターするものなど、敵の状態や特性を判断し使用することで有効に働く。
固有アビリティはATBゲージを消費せずに使える行動で、キャラクターによって違うものが使える。クラウドなら素早く動ける「アサルトモード」と動きが遅くなる代わりに強力な攻撃が放てる「ブレイブモード」を切り替える「モードチェンジ」が使え、バレットなら「ぶっ放す」という遠距離攻撃が撃てるが、再度撃つには「エネルギーチャージ」コマンドでリロードしなければならない。固有アビリティの存在によって、ATBゲージが溜まるまで攻撃を連打し、溜まったらアビリティを使う、というような単調な戦闘サイクルにはならず、常にアクションゲームとしての面白さを感じ続けられるのが素晴らしい。
そう、このゲームはアクションゲームとしてとても優れているのだ。クラウドの「ブレイブモード」は、敵の攻撃を直前ガードするとカウンターが出来るのだが、「アサルトモード」から「ブレイブモード」に移行するタイミングにもカウンター判定があり、アサルトモードで素早く動きながら流れるようにカウンターすることが出来る。また武器アビリティを発動した後には、ブレイブモードに移行するモーションが省略され素早く強力な攻撃を放てる。バレットの「ぶっ放す」を使うには「エネルギーチャージ」でリロードしなければならないのだが、「エネルギーチャージ」は1秒ほどのスキをさらしてしまう。ところが通常攻撃の最終段から「エネルギーチャージ」を行うことで、モーションの前半部分を省略できる。
このように一つ一つのアクションに、深堀出来る要素が用意されており、動かしていてとても楽しいゲームになっている。そしてこれらのテクニックは使用したら楽に戦えるし、使用しなくても育成と戦略で何とかなるバランスになっており、ATBゲージを管理してコマンドを選択するRPG的な面白さとアクション性が上手く共存できている。この戦闘システムは「FF7」のリメイクとして最適でありつつ、2020年の最新ゲームとしての面白さも兼ね備えている素晴らしいものだった。
キャラの育成について
キャラクターの育成要素としては、レベルとマテリアと武器強化が主で、特にマテリアは「FF7」に絶対欠かすことのできない要素。『FF7R』はマテリアシステムを現代によみがえらせることに成功している。
マテリアの魅力は健在
武器や防具にマテリアをはめ込むことで、魔法や、パッシブスキル、アビリティが使用できるようになる。マテリアは使い込むことで成長させられる。このゲームではキャラクター自身が魔法やアビリティを覚えることが無く、マテリアの装備の仕方によって様々な性能のキャラクターに仕上げることが出来る。強力な敵が現れた場合、マテリアを見直すことで、その敵に対応できるカスタマイズを手軽に行えるのが「FF7」の面白いところだ。
『FF7R』でも「FF7」と同じようにマテリアの組み合わせによるキャラクターカスタマイズを楽しむことが出来る。「かいひぎり」などの新たなアクションが繰り出せるようになるタイプのマテリアでも、ちゃんとキャラクターごとに違うモーションが用意されており、アクションゲームになることによって、多様な使い方があるマテリアの良さを消してしまわないようしっかりと作られている。
一つ一つが濃い武器
本作で入手できる武器には一般的なRPGのように優劣が無い。クラウドが最初から持っている「バスターソード」も終盤で入手する武器も強さの方向性が違うだけだ。別のゲームで例えると「ダークソウル」のような感じ。武器はレベルアップや特定のアイテムの入手で得られるSPでスキル取得が可能で、シンプルに攻撃力や防御力を増やしたり、クリティカル率をアップさせたり、装備できるマテリアの数を増やすスキルなどがある。
武器ごとに「武器アビリティ」が設定されており、その武器を装備している時だけ使える強力な技だが、武器を使い続けることで武器アビリティを習得し、違う武器を装備しているときでも使えるようになる。この「武器アビリティ」にも特に優劣が無く状況に合わせて有効なアビリティが変わってくるのが面白い。
溜まったSPに応じてキャラクターの武器レベルが上がっていく。武器レベルが上がると、それぞれの武器で新たなスキルが取得できるようになるので、最初に持っている武器でも終盤にならないと覚えられないスキルがあり、武器レベルが上がるたびに持っている武器のスキルを確認する面白さがある。手に入る武器の総数は普通のRPGと比べると少ないものの、一つ一つの武器に多くのスキルと武器アビリティがあってとても濃く、武器の数に関して不足しているとは思わない。ただ、クリア後の隠し要素などで武器が入手できないというのは、もったいないと感じた。せめて一つだけでもあれば、プレイのモチベーションになることは間違いなかっただろう。それほどこのゲームの武器は一つ一つが濃く、手に入れた時の喜びが大きい。
5時間を40時間に
原作で5時間前後で終わる「ミッドガル脱出」を40時間ほどのプレイ時間にするために、新たなイベントは追加されているようだが、原作の細かい流れを覚えていない私の感覚では、余計なイベントを追加して無理やり膨らませているような印象は受けず、自然な流れになっているように思えた。40時間のうち、15時間ぐらいはサブクエストや、探索によるものなので、大まかな流れは変えずにプレイ時間を延ばすことが出来ているのだろう。
スクエニの素敵な勇気
魔晄炉爆破から始まり、神羅との戦いを中心に進む「FF7」の物語は謎が多く、後にそれらの謎がどんどん解明されていく楽しさがあるが、分作の一作目である『FF7R』では、当然ながらほとんどの謎は解明されないまま物語が終了する。これは特に問題ない。もともと分作であることは公開されていた上に、一作だけでも十分なプレイ時間も担保されていたからだ。しかし終盤の展開に関しては拒絶反応が出る人もいるかもしれない。内容に関しては一切書かないが、少なくとも私としては全く問題ない。この判断をしたスクエニの勇気は本当にスゴイと思う。
続編では全く新しい冒険が待っている…多分
終盤の物語の内容に関して文句はないが、ラストダンジョンは割と長いうえにイベントも多いので少々ダレてしまった。特にイベントは、もう少しあっさり目にしてほしい気持ちもあるが、このゲームは「ファイナルファンタジー」なのでそこには目をつぶるべきか。もしかすると「どうせ一作目だからストーリーの最後まで行かないんでしょ」という気持ちがあったから、そこまで気持ちが高まらなかったのかもしれない。そういうユーザーの気持ちをカバーするために終盤の展開を作ったのだろう。たしかにスゴイ展開で驚いたが、それでも心が震えるような感動があるわけではなかった。
とはいえ「FF7」を知り尽くしている人ですら、続編が気になる終わり方だったのは間違いない。二作目ではミッドガルの外で繰り広げられる、全く新しい冒険が待っていることは確実だ。
どんどん面白くなっていきそうな内容だった
非常に豪華なリメイクで、一本のRPGを複数に分けて作り直し発売するという挑戦の一作目は成功した。戦闘は現代に合わせアクションに、当然だがグラフィックは当時とは比べ物にならないほど美しく、キャラクターの見た目もより魅力的(特に女性キャラ)になった。そしてストーリーは新たな一歩を踏み出すことを恐れておらず、とても挑戦的。
最大の問題点はクリア後の要素で、チャプター形式で進む本作は、クリア後チャプターセレクトができるようになり、好きなチャプターから始められるのだが、プレイしたい場面まで行くために、一回見たイベントをもう一度見なければならずかなりめんどくさい。ムービーは飛ばせるので問題ないが、プレイヤーが操作する必要があるイベントは飛ばせないのでとてもツライ。やり込み要素である闘技場やクエストまで辿り着くために、いちいちイベントをこなすのは、RPGで初体験するタイプのめんどくささを感じる。戦闘が面白いゲームなので、手軽に各地を回って戦えないのは大きな欠点だ。
とはいえ本作の様々な要素をさらに進化させていけば、名リメイクになるのは間違いないだろう。少なくともゲームシステム的には、どんどん面白いものになっていくことを予感させる内容だった。ストーリーに関しては完結していないのでまだなにも言えないが、続きが気になる内容だったので、今はただただ期待しておこう。
スコア 8/10
GOOD
- アクション性の高い戦闘
- キャラクターカスタマイズが手軽かつ奥深い
- 魅力的なキャラクター(特に女性)
- FF7のリメイクを本気でやろうとしていることが感じられる
BAD
- 少々寒いキャラクターやシーンが存在する
- クリア後のやり込みが快適に行えない