『Blasphemous』レビュー 適度な手ごたえ、高い達成感、凄惨なアート ”最も美しいメトロイドヴァニア”

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メトロイドヴァニアはインディー界ではエース級のジャンルだと感じることが多い。インディーゆえに安価なのにも関わらず、探索、成長、ストーリー、アクションなど様々な要素を体験できるメトロイドヴァニアは、ユーザーからすれば非常にコストパフォーマンスが高く”いい買い物”になることだろう。

そして『Blasphemous』も間違いなく”いい買い物”だ。

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シンプルながら終盤まで飽きない戦闘

『Blasphemous』のゲームシステムは、ダークソウルを踏襲している部分が多い。マップには所々に「祈祷台」という”セーブポイント”が存在し、死んだらセーブポイントまで戻され、死んだ場所には痕跡のようなものが残り、回収しなければデメリットがある。回復アイテムはストックできる個数が決まっており、セーブポイントに戻ることで全回復するなど、かなり「ダークソウル」を参照しており、それが戦闘にも表れている。

バトルシステムは剣での近接戦闘を主体にし、パリィ、回避、魔法、スキルなどがあるオーソドックスな物。敵の攻撃力が高く、しっかりと攻撃を見て回避やパリィで隙を作り出し攻撃を加えるのは、シンプルながら楽しい。

特にボス戦ではその傾向が強く、何度もリトライを繰り返すことだろう。こういう場合はこう動く、というパターンを覚えボスを撃破した時の達成感は大きい。とはいえその難易度は、ダークソウルやSEKIROほど高くは無く、大きなストレスを感じ始める前には撃破できる可能性は高い。

難易度のバランスが絶妙で、これ以上難しければ終盤までプレイヤーを継続して楽しませることはできなかったように思う。その理由は終盤までプレイヤーができることが、そこまで変わらないということ。

このゲームには他のメトロイドヴァニアのように終盤になれば圧倒的に攻撃手段が増えるという事が無く、基本は剣で斬って避けることが最後まで続く。もちろんアップグレードは用意されており、剣技もいくつか覚えるが、劇的に戦闘が変わることは無い。

魔法も覚えるが、ボス戦が圧倒的に楽になるほどではない。あくまでも剣戟の補助になる程度だ。

それでも終盤まで飽きなかったのは、シンプルな戦闘をいかに楽しませるか、という部分を突き詰めた結果なのではないだろうか。剣で敵を切った時の重く爽快な音や、ダイナミックでグロテスクなリアクション。防御面でもパリィを決めれば「ガキィン」と気持ちのいい音がなり、重い一撃が加えられるし、回避した後の攻撃への移行もスムーズでストレスが無い。

空中攻撃を↓キーを入力しながら当てることで、一瞬プレイヤーがホップし「デビルメイクライ」のような連続攻撃が加えられるのは、恐ろしいアートスタイルとは対照的に非常にスタイリッシュでプレイヤーは自己満足感を得られる。

プレイヤーに多種多彩なアップグレードを与え、ゲームプレイを継続させるメトロイドヴァニアとは対照的な、引き算の面白さを作り出した『Blasphemous』貴重でプレイする価値があるゲームだ。

細かさに圧倒されるドット絵

『Blasphemous』の何よりの特徴は、非常に細かく作られたドット絵だ。

インスパイアされているであろう「ダークソウル」を上回るほどの絶望感を感じさせる世界を、ドット絵で見事に表現していて、ボロボロの民家や教会、雪山、洞窟などのロケーションは、そのどれもが寂しさと美しさを感じさせる。

「奇蹟」と呼ばれる謎の現象が人々を襲い、体が変異したり、死んだり、化け物になったりする世界で、人々は傷の治療に「口付け」をする。非常に不潔で気味が悪い。

そんな人々の様子が、細かく動作するアニメーションで作られている。おじさんが何度も傷だらけの傷跡に口付けしている様子がしっかりと描写されており、終わっていく世界の寂しさと狂気が感じられてとてもグッとくる。

戦闘においても素晴らしいアートスタイルが存分に活かされている。プレイヤー、敵、共に滑らかに動き、戦っているだけで絵になる。特にそれを強く感じられるのが「処刑」という攻撃だ。敵がスタンした時に繰り出せるのだが、敵の種類によって様々な「処刑」モーションを見ることが出来る。

敵の首を何度も殴るように剣で斬りつけ、首を”ちぎる”モーションでは、主人公が持つ剣の切れ味の悪さが表現されていて、恐ろしさと残虐性を感じる。車輪を持つ敵なら敵の車輪を奪い、押しつぶしたり、膝から崩れた敵の顔面に剣を突き刺し、後方に投げ捨てたりと、様々な非人道的な攻撃を繰り出せる。

そのどれもが細かく作られており、大きな爽快感を得られるが「処刑」にはゲーム的に大きなメリットがあったりはせず、あくまでもビジュアル面でのインパクトをプレイヤーに感じさせるためのものだが、このゲームの長所の一つとしてカウントすべきクオリティで作られている。

完璧なローカライズ 難解なテキスト

このゲームはスペインのスタジオによって作られており、12月18日に「架け橋ゲームズ」によってローカライズされたのだが、日本語化のレベルが非常に高く、日本語化した際によくある謎の表現などが全く見られない。

特有の固有名詞なども違和感なく翻訳され、主人公「Penitent One」「悔悟者」、神のような存在が引き起こす呪いである「The Miracle」「奇蹟」など、世界観にマッチした言葉を選んでいてすんなりと入り込める。

アイテムの一つ一つには効果とは別に、フレーバーテキストによってアイテムの背景や存在する理由が語られたりする。このゲームのアイテムの量はかなり多く、テキスト一つ一つが結構な長さなのだが、文章が破綻したり違和感がある表現が無く、ローカライズのレベルの高さがうかがえる。

そんな素晴らしいローカライズなのだが、それでも『Blasphemous』の文章はとても難解。断片的に語られることが多く、一つのアイテムをテキストを読んだだけでは理解することはできず、大量のアイテムのテキストを一つ一つ読み、考察することでなんとなくわかるようにできている。

このストーリーテリングの手法は「ダークソウル」と非常に似ているが、ストーリーを進めることで理解できる部分が「ダークソウル」以上に少ないため、アイテムのテキストはその分かなり充実しており、設定考察が好きな人にはたまらないのではないだろうか。

考察を楽しめるような、レベルの高いローカライズをしてくれたことに感謝しかない。

終盤まで探索スピードは変わらない

終盤までプレイヤーができることがそこまで変わらないということを、戦闘面ではデメリットにはなっておらず、シンプルさを突き詰めた楽しい戦闘になっていると言ったが、移動の面では明確にこのゲームの欠点になっている。

移動に関するアップグレードは、アクセサリーで回避距離が延びるぐらいでほぼ存在しないにもかかわらず、マップはとても広い。ワープできる施設は存在しているが、マップの広さとプレイヤーの移動スピードの遅さを考慮すると明らかに足りておらず、ゲーム終盤の探索にはストレスがある。

一度倒した敵はセーブポイントに戻るまで出現しないのは、探索の快適性を上げているが、それでも移動自体が遅いので移動に関する問題の解決にはなっていない。

移動が遅いことで、初見の場所をゆっくりと探索したり、美しいマップを見る楽しさを感じやすいが、その分メトロイドヴァニアとしての完成度を捨ててしまっている。

まとめ

おぞましい世界感をドット絵で美しく表現したアートスタイルに、発売前からファンが多いゲームであり、その期待に見事に応えているゲーム内容だった。

シンプルな戦闘システムに適度な難易度、メトロイドヴァニアらしい広いマップ、多くの収集要素など、アートだけではなくゲーム部分もとてもリッチに作られており、プレイの満足感は非常に高い。

中盤から終盤の探索は、移動スピードの遅さとワープポイントの少なさに明確にわずらわしさを感じたが、そのような欠点を補って余りある魅力によって好意の方が上回った。

もし君がメトロイドヴァニアに、今までにない歯ごたえや、暗すぎるストーリーを求めているのなら、是非ともプレイしてほしい。

スコア 82/100

GOOD

  • シンプルな戦闘システムに適度な難易度
  • 収集物に関する考察しがいのあるテキスト
  • 美しいアートスタイル
  • ローカライズが完璧
  • マップ探索が楽しい

BAD

  • 移動スピードが遅くワープポイントが少ない割にマップが広すぎる
  • マップにランドマークの表記が少なく迷いやすい
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