4年前、クラウドファンディングサイトであるキックスターターで多数のファンに支援され、大きな期待を背負い開発がスタートしたゲームがようやく発売された。
結果的に期待を裏切られることは無かった。
このゲームは間違いなく「キャッスルヴァニア」だった。
インディーゲームにメトロイドヴァニアは多いが、そのほとんどは”メトロイドライク”ゲームであり、”キャッスルヴァニアライク”のゲームはほぼ存在していない。
そんな状況で”キャッスルヴァニアライク”ではなく”キャッスルヴァニア”が遊べるのだ。こんなにうれしいことは無い。それもすべての要素が進化したキャッスルヴァニアを超えたキャッスルヴァニアをだ。
『Bloodstained: Ritual of the Night』は間違いなくIGAが作ったゲームだった。
レビュー
敵と戦うのが楽しいアクション性の高いメトロイドヴァニア
「Bloodstained」のジャンルは「メトロイドヴァニア」。メトロイドヴァニアの醍醐味は広いマップを探索することだ。
今まで進めなかった場所を突破するために新たなアイテムやスキルを見つけ出し、新たな場所にたどり着く。そこでさらに探索し新たなアイテムを見つける・・・このようなループが楽しいのがメトロイドヴァニアだと思っている。探索において敵は邪魔な存在であり、後半になるとガンガンスルーするのが当たり前になる。
しかし「Bloodstained」は敵との戦いそれ自体が楽しい。これは明確にキャッスルヴァニアから受け継がれた部分だと感じる。
やたらと多い武器やシャード(魔法のようなもの)、そして武器に設定された必殺技とシャードを組み合わせればオリジナルのコンボを作ることもできる。正直ノーマルモードではそこまでするほど敵は強くないが、それでも技を使いたくなるのは一つ一つの武器やシャードの見た目のカッコよさや攻撃がヒットした時の音の気持ちよさ、敵のリアクションなど様々な調整による賜物だろう。
またこのゲームは敵に与えたダメージが数値として表示されるのだが、成長するごとに敵に与えるダメージが上がっていくのを数値として確認できる伝統的な戦闘システムは、メトロイドヴァニアかつ成長要素があるゲームとはベストマッチだと感じた。最終的には序盤に与えていたダメージの100倍ほどのダメージを出すこともできるのはとても爽快感があり、もっと効率よくダメージを与えるために武器やシャード、装備など様々な部分を成長させたくなる。
そして戦いが楽しいと、探索もさらに楽しくなる。「Bloodstained」における探索は進めない場所を突破するためのアイテムを見つけ出す楽しさだけではなく、新たな武器やシャードなどプレイヤーが楽しむための”おもちゃ”を発見する楽しさがあることによって、さらに魅力的なものになっている。
異様な数の武器 魔法 スキル 奥義
このゲーム最大の魅力は武器とシャード(魔法)の数だ。
武器は100本以上、シャードも100前後存在しそのすべてがとても個性的なので集めたくなる。
武器は短剣、剣、刀、斧など10種類存在しそれぞれの武器種によってモーションや特性が違うのだが、同じ武器種でもリーチや属性などの違いで個性を持たされている。そしてこのゲームのアクション性を高めているのが”必殺技”だ。
武器には必殺技が設定されている物があり、格闘ゲームのようなコマンドを入力することで強力な技を使える。必殺技は通常攻撃からキャンセルして使用することが出来るので、ジャンプ攻撃→地上攻撃→バックステップキャンセル→攻撃→必殺技という風にコンボを組み立てることが出来る。これが楽しいが、もっと簡単に高い火力は出せるので必須テクというわけではなく、あくまでも自己満足、楽しむための要素という感じ。しかしこれがあるおかげで武器を集めずにはいられなくなってしまう。
シャードは同時に6種類装備でき、組み合わせて使うことで高い効果を発揮できるし、そのすべてがアップグレード可能。攻撃タイプのシャードはアップグレードすることで攻撃力が上がるだけではなく見た目が全く違うものになるため、どんな見た目になるのかなーとワクワクしながら強化できるのが楽しい。
能力が上がるタイプのシャードは強化することで、装備しなくても発動する”スキルシャード”になるため、最終的には30個ぐらいのシャードを同時に装備した最強状態にすることもできる。
武器、シャードその多くに強い個性があり、ただ攻撃力が違うだけ、などということは徹底的に避けようとしているのがわかる。ただクリアするだけなら道中で拾うことが出来る武器やシャードで十分なのに気づけば集めてしまうように作られている調整は、流石IGAという感じ。職人芸とはこういうものなのかもしれない。
そしてこの要素こそが”キャッスルヴァニア”であり、”メトロイド”とは違う部分だ。大量の武器や魔法を集めることに飢えていた人はプレイし始めたら止まらないだろう。ゲーム進行に必須でないアイテムを集めて集めて集めまくる体験がまたできるのが嬉しくて仕方がない。
ぶっ殺しておくれ!
「ぶっ殺しておくれ!」
これはあるNPCのおばちゃんからクエストの依頼を受けた時に毎回言われるセリフなのだが、連続で依頼を受けた時などこのセリフを連呼するのでとてつもないインパクトがある。このゲームはフルボイスなのでなおさらスゴイ。ものすごい勢いで「殺す」というワードを言われると人は笑ってしまうということに気付かされた。
ぶっ殺しておくれ!を筆頭にこのゲームにはゴシックホラー的な要素もありつつ、ユーモアのある要素やイースターエッグなどキャッスルヴァニアを彷彿とさせる要素がたくさん詰め込まれている。
演奏することが出来るピアノや殺人鬼が店主の美容院、どこかで見たことがある吸血鬼が待つ図書館、さまようやたらヘラヘラしたおっさん、こういうものがマップの各所に設置されており、戦い続きの探索のいいアクセントになっている。
このゲームはキックスターターという開発者を支援するサービスを利用して資金を集めており、ゲーム中に支援者の顔が描かれた絵画がオブジェクトや敵として登場するのだが、こういうファンサービスもしっかりしており発表から4年間待ったファンも納得できるだろう。
惜しいのは日本だけPS4などのコンシューマ版の発売が3か月ほど遅れることだ。パブリッシュ関係は開発者がどうすることもできない部分だと思うが支援者はショックを受けただろう。
しかし実際にプレイした人はゲーム中に登場する大量のファンサービスとゲーム自体のクオリティから、開発者のファンに対する大きな愛を感じたのなら許すべきだろう。それぐらいこのゲームはIGA、キャッスルヴァニアファンへの愛にあふれたゲームになっていた。
レビューのまとめ
キャッスルヴァニアを作ったクリエイターが作ったゲームは「キャッスルヴァニア」そのものだった。
しかし武器や魔法はさらに個性が強くなっており、収集欲をキャッスルヴァニア以上に掻き立てられる。
マップの随所にある隠し要素やイースターエッグはクリエイターからのラブレターのように感じられ、発表から4年間待ったことが完全に報われたと感じた。
ストーリーはそこまで面白いものではなかったが、キャラクターは魅力的で主人公のミリアムはクールに見えるが食事の時などに見せるリアクションから年相応(18歳)の可愛さが感じられるのがとてもいい。名前の無いNPCもとても個性的だ。「ぶっ殺しておくれ!」が聞けただけでこのゲームを買ったことは間違いではなかったと思わせてくれた。
これから無料のDLCが大量に配信されることが決定しており、これからもどんどん面白くなっていくのは間違いない。
スコア 92/100
GOOD
- 一つ一つが個性的な収集物
- 戦闘のアクション性の高さと成長要素
- 広いマップに詰め込まれた隠し要素
- 個性的で魅力のあるNPC
BAD
- ストーリーの魅力は薄い
- ミリアム(主人公)以外のCGモデルの出来が少し悪い