『APE OUT』レビュー 78/100

ゲームレビュー
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動物園に行ったことがあるだろうか。オリやガラスの向こうでうろついている動物を眺めるのは普段の生活では体験できないことだし、動物たちはとてもおとなしくかわいい。

僕は動物園に行くと「こいつがオリから出てきたらどうなるのかな?」と思うことがある。その場に武井壮がいれば瞬殺だが、もし武井壮がいないならすぐさま逃げなければならない。なぜなら人間と動物の戦闘能力の差は歴然だからだ。草食の動物ならまだしも、肉食獣のトラやクマなどが出てきたら園内はパニックになるだろう。

しかしもっと怖いのは知能の高い動物がこちらに殺意を向けた時なのかもしれない。

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レビュー

アーケードスタイルのハイスピードアクション!

『APEOUT』はトップダウン(見下ろし視点)のステージクリア型のアクションゲーム。1ステージが8~9のエリアに区切られており、1エリアをクリアすれば倒されてもそのエリアからコンティニューできる。ロックマンのようにコンティニューに制限は無いので、何度もトライすればいずれクリアできるだろう。

このゲームの主人公はなぜか捕らえられている「ゴリラ」だ。ゴリラに与えられたアクションは「突き飛ばす」「掴む」「投げる」の3つ。いずれもLRボタンのみで操作可能になっており、親指は常に左右のスティックの操作に集中できるようになっており、操作感はスムーズ。

ゴリラはとにかくゴールを目指すがそれを拒むのは「人間」。基本的に銃を装備しており、ゴリラを見つけるや否や銃で攻撃してくるが、こちらを発見してから構えるまでに1秒から2秒の猶予があるため、その隙を逃さずゴリラによる「突き飛ばし」もしくは「掴む」ことで無力化できる。

人間を突き飛ばし壁にぶつけるたり、掴んで投げ飛ばして人間にぶつけると、体が大げさなほどにバラバラになり、血が大量に飛び散り大音量のシンバルが鳴り響くのが、最高に気持ちいい。ゲームの目的はゴールに辿りつくことなので、人間を必要以上に殺す必要はないが、ついつい殺してしまうのは映像と音の演出がマッチしているからだろう。

しかしゴリラも不死身ではなく、銃による攻撃には攻撃力が設定されており、大体通常の銃撃を3発受けると死ぬため、いかにすばやく近づき無力化するかが腕の見せ所だ。大体と言ったのはこのゲームには体力ゲージが存在していない、というかUI自体が存在していないのでプレイヤーは、ゴリラの出血量を見て体力を確認する必要がある。

独特のビジュアルと演出

「APEOUT」のシルエットによるビジュアルは、表現をマイルドにする効果がある。人間をバンバン殺すゲームだがバラバラになる体や血も、あくまでも演出の範囲内に収まっている。ゴリラは一般人も殺すことがあるため、リアルな表現だと生々しくなってしまったかもしれない。

ビジュアルだけでなく、ステージ開始時の演出はかなりのこだわりを見せており、次のステージに行くのが楽しみになるのは嬉しい。

最初のステージでは、人間を殺すごとにシンバルが鳴って、一瞬画面が止まり、スタッフの名前が大きく画面に表示されるという、バカバカしく自信に満ちた演出はこれからのプレイへの期待を高めるのに十分だ。

最終ステージは人間たちに動物園に来たことを後悔させる内容になっているのでエンディングと合わせて必見の演出になっている。めちゃくちゃかっこいいぞ。

野生を感じる音楽とSE

BGMはドラムやその他謎の打楽器などが常に鳴り続けており、ジャングルの雰囲気を常に感じていられる。そこに敵を倒した時のシンバルの音や、人間の銃撃の音などが混ざり合い、ゲームプレイ中は踊っているような感覚になるのが気持ちいい。

ゲームのステージはレコードのジャケットで表現されており、このゲームがいかにBGMにこだわってるのかが見た目でも伝わってくる。

特にエンディングテーマは鬼のかっこよさを誇っており、直前のゲームプレイからの流れは、インディーゲーム好きであることが報われたと思える内容になっている。

ランダム生成による攻略感の薄さ

各ステージの敵の傾向やギミックに統一性はあるものの、ステージの配置は死ぬたびに変わるため、プレイヤーの純粋な腕前やアドリブ力を試されるものになっているのだが、その分クリアした時にそのステージを理解してクリアしたという感覚は薄く、たまたまうまくいったのではないか、という疑問を持ってしまう。

このゲームは難易度が高く、わずかなミスにより一瞬で死ぬことや、成長要素なども存在しないので、自分で考えてステージをクリアしたというよりも、たまたま敵があまりでなかったり、障害物の配置がたまたま良くてクリアできたような気持ちになりやすい。

もちろんゲームクリア後もう一度最初のステージをプレイしてみると、最初にプレイした時より早くクリアできるため、自分の腕前の上昇は感じられるのだがそれでも死ぬときは死ぬことからも、ステージ配置のランダム化と成長などがないシンプルなゲーム性の相性は悪いと感じる。

スコアラー以外には厳しいリプレイ性

若干ネタバレになるが、ステージは全部で4つ+クリア後コンテンツがある。各ステージにはストーリーモードのほかにアーケードモードが存在しており、本編では一切なかったスコアの要素があるモードになっている。

敵を倒した数や、クリアタイムでスコアが決まるが、このモードを熱心にプレイするのは普通のゲーマーには中々厳しいものがある。本編と同じステージをよりうまく早くプレイすることを目指すことになるが、このゲームには配置以外にランダム性はなく非常にシンプルなため、もう一度プレイするにはRTAの大会に出るなど、それなりの理由が必要になるだろう。

あくまでも一度きりの体験として考えれば、他のゲームでは体験できないものがあるのは間違いない。

僕のクリア時間はノーマルモードだけで、4時間から5時間ほど。これを長いとみるか短いとみるかというところだが、個人的には少し短いと感じたし、もう少しリプレイ性も欲しいと思ってしまった。

レビューのまとめ

独特なビジュアルや抜群の操作性に、野生的なBGMが合わさったプレイ感覚は爽快感があるし、敵の動きをよく見て立ち回る戦略性もある。ステージのランダム配置は達成感を阻害する要因になりえるが、そんなものを気にせずこのゲームの魅力を感じられる人は少なくないだろう。

ステージ構成や開始時の演出などによって、わずかに語られるストーリーは人間に対する皮肉のようなものになっている。それが評価を左右するほど大きなものではないが、クスっと笑えるものにはなっていて、今後動物園に行く時にはちょっとAPEOUTのことを思い出してしまいそうだ。特にゴリラのオリには近づかない方がいい。掴まれて盾にされ壁にぶつけられ肉片にされる可能性がある。

スコア 78/100

GOOD

  • 野生的なBGMとSE
  • スムーズな操作
  • 特徴的なビジュアルと演出
  • 一般人の扱い

BAD

  • リプレイ性の低さ
  • ステージのランダム配置によって達成感が損なわれている
  • 各ステージの違いの薄さ
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