『龍が如く7 光と闇の行方』レビュー 春日一番を好きになるためのゲーム

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『龍が如く7』はシリーズで初めて戦闘がターンベースのバトルになり、パーティーを組んで戦う「ドラクエ」のようなRPGになった。しかも主人公は「桐生一馬」から「春日一番」に変更され、今までとは全く違うゲームになったかのように見える。

しかしその中身は間違いなく「龍が如く」だった。豊富なミニゲームやサブイベントに現実の企業とのタイアップ、裏社会の陰謀に立ち向かうストーリーなど、今までの龍が如くに存在していた要素は”戦闘システム”を除きすべて引き継がれている。

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ところで、あなたは今までの「龍が如く」の戦闘をどう思っているだろうか。もし以前のようなアクション戦闘が大好きで、戦闘を楽しむために龍が如くをプレイしてるんだ!アクションじゃない「龍が如く」なんて龍が如くじゃない!!という方は『龍が如く7』のRPG戦闘を楽しむのは当然難しいだろう。今作の戦闘はRPGに興味が無い人でも楽しめるタイプのものではなく、かなりピュアでクラシカルなRPGだからだ。

そして「龍が如く」のアクション戦闘に大して興味が無く、ストーリーを楽しめればそれでいい!という方や、RPGが大好きで今回のRPG化に期待していたという方。そういう方も終盤の戦闘の面倒くささや理不尽な部分に耐えられず、投げ出してしまう可能性はある。

それでもラスボス撃破後のエンディングで十分感動できるだけのストーリーは用意されているし、続編に期待したい作品だった。

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春日一番=ターンベースバトル

今までの「龍が如く」 の主人公 、伝説の龍と呼ばれた男「桐生一馬」はその強さ故に孤独であり、一人で戦うことが多い。銃で数発撃たれた後に、自分と同じような体格の男とケンカできるほどタフなので、一人で戦うのも無理はない。

対して今作で新主人公を務める「春日一番」は陽気で良くしゃべり、気のいい兄ちゃんと言った雰囲気なので、友達がどんどん増えていき戦闘も仲間と一緒に戦う。彼は「桐生一馬」ほど設定的にも強くないので、パーティを組んで戦うことに説得力がある。現代で生身の人間を相手に戦うRPGというのは今までにないし、これだけでもかなり興味深い。

戦闘時は「ドラクエ」が大好きな春日一番の妄想によって、敵と自分の仲間たちが変身し、コスプレした大人による乱闘が繰り広げられる。戦闘画面になったとたんリアリティが無くなるが「春日一番の妄想」という設定で、世界観への影響を少なくしている。また敵がわかりやすい姿になることで「ドラクエ」のようにそれぞれの敵がどういう攻撃をしてくるかを覚えやすいようにもなっており、似たような見た目の怖い人間が敵であることが多い「龍が如く」をRPG化するための良いアイデアだと感じた。

戦闘システムは「ドラクエ」のようなターンベースの戦闘で非常にシンプルなもの。敵を攻撃して転倒させると近くの仲間が追い打ちしてくれるシステムがあるが、ダメージは非常に低く中盤以降はほぼスキル攻撃しか使わないのであまり機能していない。強力なボスとの戦闘も、基本的には弱点を突くことができるスキルを撃ち続け、ダメージを受けたら回復する、という事を繰り返すことになりとても単調。

現代のRPGでは敵の体勢や状態を崩し、そこに強力な攻撃をたたき込むようなコンボがあるのが一般的で、世界的にヒットした「ペルソナ5」は本当に見事なターンベースの戦闘だったが、「龍が如く7」には本当に何もない。覚えられるスキルは多く、ダメージの大小やヒット数や攻撃範囲や属性などの違いがあるが、結局はそれぞれの敵に有効な属性で威力の高いものを撃ち続けることになる。

しかしこれは「ドラクエ」でも同じだ。有効な技や魔法を撃ち、ダメージを受ければ回復するという事を繰り返すのは「ドラクエ」でも定番の戦術だが、それでも「ドラクエ」は面白い。これは状態変化と敵のステータス調整の上手さが原因だと感じている。

補助魔法の効果が薄い

ドラクエには仲間の防御力を上げる「スクルト」や敵の防御力を下げる「ルカニ」といった補助呪文があり、これが決まると大幅にダメージ軽減やダメージアップができ、圧倒的に有利に戦いを進めることが出来るので、自分の戦略が上手くいった感覚を味わえる。「龍が如く7」にも補助スキルがあるが、その効果は本当に微々たるもので効果が実感しにくいし、効果時間も大体3ターンぐらいとかなり短い。これならスキルで攻撃してた方がマシだと思ってしまう。

敵のHPと防御力の高さ

ステータス調整に関しては、終盤のボスが固すぎる。固いなら固いなりに、戦闘が楽しければいいが、スキル撃って回復するだけの単調っぷり。かなりツライ。逆に序盤から中盤のボスはHPと防御力が低いだけでなく、攻撃力も低いため全く緊迫感が無い。「龍が如く7」のバトルを通じて「ドラクエ」のバトルバランスの調整がいかに上手いのかが、よくわかってしまった。

特に終盤、非常に不快で面白くないボスが一体いる。このボスへのイラつきでプレイを辞めてしまう可能性すらあるほど悪質なボスなので、プレイするなら終盤のバトルに関しては覚悟しておいた方がいいだろう。

職業、武器強化

職業切り替えや武器の強化などRPGの一作目にしては要素が多いが、そもそもの戦闘の出来が良くないのでやる気が出ない。店売りの武器で十分クリアできるし、職業も初期の職業で十分戦える上に、上級職なども無いので特に切り替える必要もない。女性キャラを僧侶的な職業である「アイドル」にしていると、ちょっと楽になるぐらいだ。

個人的に「龍が如く7」で最も期待していたポイントが戦闘だっただけに非常にショックだった。

ストーリーは「龍が如く」クオリティ

戦闘は面白くないが、ストーリーは流石「龍が如く」といった面白さ。私は序盤とエンディングの2か所で号泣した。

ソープで生まれ、両親もいない春日一番は、24歳の時にヤクザの兄貴分の身代わりとなって刑務所に行き、18年の刑期を終えて出所し、尊敬するヤクザの親分に会いに行くが、その親分に銃で撃たれ横浜のホームレスの集落に捨てられるというなんともかわいそうなキャラクターだが、持ち前の明るさとケンカの強さでどんどん仲間を増やしていく。その姿は正にRPGの主人公のよう。

ホームレスの「ナンバ」キャバクラのママ「サエコ」元警察官の「足立」。この3人と共に横浜で起こる血なまぐさい事件を解決していくうちに、すべての事件に東京都知事が関わっていることに気付く、という結構スケールの大きな話になっているが、その中で語られる親子愛や家族の絆が作品の大きなテーマになってくる。

ホームレスやキャバ嬢が、日々体を鍛え刃物や鈍器や銃で武装したヤクザと互角以上に戦える理由の説明もないし、劇中には思わず「そうはならんやろ」と言いたくなるシーンが多いが、そもそも龍が如くシリーズは現代を舞台にしてるだけで、リアリティはそんなに高くないためあまり気にならなかった。

ストーリーを最初から最後までプレイすることが出来れば、新たな主人公「春日一番」のことが好きになることだろう。終盤のバトルは腹立たしいが、プレイするのならば是非乗り越えて、エンディングまで辿り着いてほしいと思う。

ミニゲームは不要かもしれない

「龍が如く」伝統の多すぎるミニゲームは健在で、パチスロ、将棋、麻雀、トランプ、セガのゲームがゲームセンターで遊べたりと、ゲーム内ゲームの多さは数あるゲームの中でもトップクラスだろう。

元々存在しているゲームである、パチスロやこいこいなどのギャンブルや、ゲームセンターで遊べるレトロゲームは世界感のリアリティ向上につながったり、ギャンブルは元々面白いのでこのゲームに入っていてもいいと思うが、龍が如くのオリジナルミニゲームに関しては少々問題がある。

具体的には「ドラゴンカート」や「カラオケ」などのゲームだが、すべて既存のゲームの少し面白くないバージョンと言っていい。ドラゴンカートはレースゲームなのだが、マリオカートと比べると爽快感も操作性も数段落ちるし、カラオケはノーツに合わせてボタンを押すオーソドックスな音楽ゲームだが、DJMAXやCYTUSのようなゲームには遠く及ばない。

ミニゲームなのだからクオリティが低くてもいいと思うが、現代はスマホでもゲームが遊べるし、インディーゲームの流行によってゲーマーには多くの選択肢がある。そんな中でストーリーが売りである龍が如くのミニゲームをわざわざ遊ぶ人がどれだけいるのだろうか。「龍が如く」のアイデンティティを守るために収録しているのかもしれないが、そのために作られたミニゲームだとすれば逆にクオリティが高すぎる。ドラゴンカートを作るための労力をバトルの調整に使ってくれたら…と考えてしまった。

まとめ

ストーリーは感動的で主人公の交代にも成功したと思うが、バトルはあまり良い出来のものではなかった。とはいえバトルをアクションに戻すと新鮮味が大幅に減るし、かなりの労力を投じて作ったバトルシステムであることはプレイしていて強く感じるので、RPGとしてのバトルを強化した続編が遊びたいと感じた。

バトルが面白くないが、難しいということは無いので、難易度で詰まってしまうことを考えている方は安心して遊んでいい。新たなバトルシステムに期待していた私のようなプレイヤーは大きなショックを受けるだろう。それでもストーリーで感動できる可能性は高いので、退屈なバトルを乗り越える自信がある方はプレイしてみてもいいのではないだろうか。

スコア 6/10

GOOD

  • 親子や家族をテーマにした感動的なストーリー
  • 新たな主人公「春日一番」のキャラクター

BAD

  • 戦闘の単調さ
  • ボス戦のバランス調整
  • 終盤の不快なボス
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