『侍道外伝 KATANAKAMI』レビュー 侍道×ハクスラ×ローグライク

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『侍道外伝 KATANAKAMI』は外伝という名の通り『侍道』シリーズのスピンオフ作品で、初代侍道のキャラクター達が「宿場町」「赤玉党」「黒生家」の3勢力に分かれ争いを繰り広げる「六骨砦」という土地で物語が展開されるが、ストーリーを楽しむというよりもハック&スラッシュのアクションゲームとして楽しめるように作られている。

娘を借金のカタに連れ去られた鍛冶屋「堂島軍二」の借金返済を助け、その見返りに堂島の娘と結婚するのが主人公の目的。夜に光る一本松の根本がダンジョンにつながっており、そこで刀を集め、昼間は鍛冶屋として3勢力に刀を売りつけることで金を稼ぎ借金を返済していく。

PS4/Switch/PC『侍道外伝 KATANAKAMI』紹介トレーラー

ダンジョンはローグライクのように毎回レベルがリセットされ、力尽きるとすべてのアイテム、刀、お金をロストする。レベルはリセットされるものの刀の強化はリセットされない上に、アイテムも持ち込み放題なので完全にローグライクと言うわけではない。

ゲーム開始時に「堂島」とその娘「七海」と金を貸している「紅屋」によるストーリーイベントがあり、それ以降クリアまで特にストーリーに関するイベントなどは起こらないし、各勢力のキャラクターは刀の注文をしてくるだけで特に関わることもない。主要キャラクターを斬り倒しても次の日には何事もなかったかのように生き返っていたりするので、以前の「侍道」のように自分の行動によってキャラクター達に大きな影響を与えることはできない。あくまでもダンジョン攻略に特化したゲームになっているようだ。

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戦闘について

プレイヤーが戦闘時行える行動は弱攻撃、強攻撃、回避、防御、アイテムの使用と、強力なシステムである「極見」と「刀刻」がある。

爽快感の高い「極見」と「刀刻」

「刀刻」は一時的な強化システムで攻撃と移動のスピードが上がりアーマーが付いたり攻撃範囲が広がるなどとても強力。「おうぶ溜(ゲージ)」(以下ゲージ)を溜めることで使用することが出来る。ゲージは敵を攻撃することで溜められるので、ザコ戦で溜めて強力なボス戦で使うことで有利に戦える。敵が密集している所で使えば無双系のゲームのように一気に敵をせん滅出来てとても爽快だ。

「極見」はこのゲームで最も爽快感がある攻撃だ。「鬼武者」を知っている人には「一閃」と言えば伝わりやすいと思うが、敵の攻撃が当たる直前にガードもしくは回避した直後に攻撃することで大ダメージを与えられるシステムで、成功させたときのエフェクトと効果音が派手でとても気持ちがいいし、モーションもカッコイイ。「極見」を成功させたあとタイミングよくボタンを押すことで近くにいる別の敵に対して「極見」を繰り出す「連続極見」はその攻撃で敵が倒せればどこまでも連鎖するので、かなりの爽快感が得られる。

刀には7種類の構えのどれかが設定されているが、構え毎に技が違うのではなく”刀ごと”に繰り出せる技が変わってくる。これが素晴らしいポイントで本家侍道から受け継がれた要素でもある。刀には「刀級」というレベルがありこれを上げていくことで技を覚えることができる。各武器ごとに共通する技もあるが、技の構成はそれぞれ違うためどんな技を覚えるのかを楽しみにしながら刀を育てていける。

刀の個性を消す「キャンセル」

ただ刀ごとの多彩な技を使う意味はほぼ無い。なぜかというと攻撃をステップによってキャンセルすることが出来るため、どの刀でも最初から覚えている弱攻撃を2回~3回繰り出してキャンセルを繰り返すことで敵がひるめばボスでもパターンにハメることが出来るからだ。この行動をここでは「弱攻撃キャンセル」と呼ぶことにする。弱攻撃キャンセルが強すぎて予備モーションが長い強力な技を使う意味が無い。仮に敵がひるまない場合でもシンプルに攻撃スピードが速すぎるので効率で他の技が勝てない。

ハメている様子

さらに「刀刻」を組み合わせることで、攻撃力と攻撃スピードが上がり自分がひるまなくなるので弱攻撃キャンセルの強さがさらに加速する。これによりボスもダンジョンの道中でゲージを溜め、刀刻+弱攻撃キャンセルを行うことで効率よく倒せるので単調になってしまっている。

弱攻撃キャンセルによって刀に求められるのはパラメータだけになり、どんな技を使えるのかは関係が無くなっている。強い刀を拾いそれを強化して使い続ければゲームをクリアすることが出来るため、それ以降拾う刀は売るために拾うだけになり新たな刀を手に入れるワクワク感はかなり少なくなってしまったのが残念だった。

お金を稼ぐ大変さがわかる

このゲームの目的は借金を返済することなのでとにかくお金が必要になる。ダンジョンに潜るのも刀を集めて売るためであって、ダンジョンの最深部にいるボスを倒してもクリアとはならない。それにある程度刀を強化したりアイテムを準備しておけば、ダンジョンの最深部には何度目かのトライでたどり着けるし、ボスも倒せてしまう。そうするとあとやることはお金を稼ぐことしかない。ダンジョンの奥で手に入る刀の方が高く売れることが多いので奥まで潜り刀を集めて地上で売り、また潜って集める…という作業になる。これを繰り返し借金を返済すればクリアとなる。

そして借金返済後もある目的のために大量のお金が必要になる。新たなダンジョンも解放されるが「弱攻撃キャンセル」でOKだ。クリアできる。ボスもハメられる。ダンジョンの奥にいる敵の方が良い刀を落とすので何度も潜って刀を集めて地上で売り…という事を繰り返すことでそのうちお金は集まる。しかしこの作業は非常にツラく苦しい。ダンジョン攻略自体が楽しいのなら何の問題もないのだが、ランダム性が高くない上にどんな敵でも攻略法はそこまで変わらないしピンチになったとしても「刀刻」を使えば切り抜けられるため急速に飽きが来る。お金稼ぎの終盤は無になって刀を拾っていた。無にならなければ途中でゲームをやめてしまっていただろう。

こだわれる刀鍛冶

このゲームはタイトルが「KATANAKAMI」と言うだけあってプレイヤーを強化する要素は刀を鍛えることに集約されており、突き詰めるとかなり強力な刀が作れるシステムになっている。刀には「強化限界」という鍛えられる回数を示す数値が設定されており、その回数だけ「切れ味(攻撃力)」「(刀の)耐久度」のどちらかを選んで強化することができるシンプルな「鍛える」強化と、刀に「号」(あだ名のようなもの)を付けることで特殊な効果を3つまで付けることが出来る強化がある。

刀を「鍛える」とき上昇する数値はランダムだが強化回数を消費せずにやり直しが可能で、納得いくまでやり直すのは一つのやりこみポイントになっており、最強の刀を作りたい場合は厳選作業が必要になってくる。ただ「鍛える」には素材を使わなければならないうえやり直すたびに素材は消費されていくので、完璧な強化をするためには大量の素材が必要になる。「鍛える」1回で上昇する切れ味は10~20ほどだが「強化限界」が15回ある刀ならわずかな数値でも大きな差になる。

「号」は「鍛える」のように単純な強化ではなく、その刀を使って一定の条件を満たすことで付けることが出来るようになる。その効果はかなり強力で切れ味が200も上昇したり40%上昇したりと超強力。しかも3つ付けられるので完璧に「鍛えた」刀に完璧な「号」を付けることが出来れば切れ味500越えも夢ではない。クリア後から2つ目に出現するダンジョンは高難易度なので、ちゃんと強化した刀を活かすことが出来るようになっており、ただの自己満足で終わらないのが良いし、エンドコンテンツとして機能している。

侍道らしさは薄い

ダンジョンの外では鍛冶屋として「宿場町」「赤玉党」「黒生家」の3勢力からの刀の注文に応えることで金を稼いでいくのがメインだがそれだけではなく、鍛冶屋周辺を歩いている各勢力のNPCを辻斬りすることができ、やり過ぎると鍛冶屋が襲われたり刀の注文をしてくれなくなったりとプレイヤーが行ったことがNPC達に反映されるのは面白いが、それによって連鎖的にイベントが発生したりするわけでもなくダンジョン探索で有利になるようなこともない。本家侍道のその辺を歩いている人を斬ることが出来る面白さは、世界がしっかりと作られているからこそ感じられる要素であり、鍛冶屋の周辺から出ることが出来ない「KATANAKAMI」においてはあくまでもちょっとしたおまけに過ぎない。とても寂しいが、このゲームはハクスラでありローグライク。戦いこそがすべてなのだ。

まとめ

「侍道」のように刀一つ一つ技が違い個性があり、新たに追加されたシステムを用いたアクション部分も爽快感があるし、ダンジョンもランダム生成され何度も遊べるように思える。しかし刀の個性的な技の数々は、新たに追加されたシステムとうまくかみ合わずにその個性は生かせず、ランダム生成されるダンジョンも一定の攻略でクリアできる上にアイテムも持ち込み放題、刀もほぼ売るためだけに集めることになり後半は良い性能の刀がドロップしても何も思わなくなってしまったりして、ゲームの中盤にはローグライクとしてもハクスラとしてもあまりよく出来ていないゲームという印象持った。そしてその印象は最後まで変わることは無かった。

スコア 6/10

GOOD

  • 「侍道」が復活したという事実
  • アクション部分の爽快感
  • 刀鍛冶の奥深さ

BAD

  • 単調なゲームループ
  • お金稼ぎの作業感
  • 一定の攻略でクリアできるダンジョン
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